■マイクロカプセルとは?
マイクロカプセルとはその中に芯物質と呼ばれる物質が封じ込められている、文字通りマイクロ(微小な)カプセル(容器)であり、一般的には数ミクロンから数百ミクロン程度の大きさを持っております。
次にわかりやすく図で示しておりますように、芯物質はカプセル壁で保護されております。たとえば、香料などは蒸散しやすく長期間にわたって香りを保つのは難しいのですが、これをマイクロカプセル化(マイクロカプセルに封入すること)しますと、カプセル壁を通しての蒸散になるので長く香りを楽しむことができるようになります。
この例から壁(容器)材料やその構造などを工夫することによって「芯物質」が外部環境へ放出される時期、場所、速度を調節できることがお分かり頂けると思います。
Q. マイクロカプセルはどのようにして作るのでしょうか?
A. マイクロカプセルの作り方は多種多様です、教科書には例えば次表のような方法が紹介されています。
芯物質をいかに封じ込める(混ぜてしまう)のか、芯物質をどのようにして外部に出していくのかという点が重要です。
例えば、次の表にある界面重合法でのマイクロカプセルの作り方の一つを紹介致します。
界面重合とは文字通り界面でポリマー(重合物、固体)を作ることです。 界面の説明をします。水と油をコップに入れればお互いが溶け合わないので最終的には水が底の方に沈み水の相(層)を作り、油は油の相(層)を作って水相の上に浮かびます。水相と油相との境界面を界面と言います。たとえば、大量の水の中に少量の油を入れてかき混ぜていけば、水の中に油滴ができます。これは言い換えれば、油は油水界面で被覆(覆われる)された状態にあるわけです。激しくかき混ぜれば小さな油滴になるでしょうし、ゆっくりかき混ぜれば比較的大きな油滴ができるでしょう。
それではマイクロカプセルを作ってみましょう。
油を芯物質とするマイクロカプセルです。
あらかじめ油には油に溶けやすく水に溶け難いジクロリド化合物注1)を入れておきまして、水に入れてかき混ぜます。水中に、ジクロリド化合物を含んだ油滴群ができました。これに水に良く溶け、油に溶け難いジアミン化合物注2)水溶液を入れると、油滴界面でクロリド基とアミノ基が反応して、いわゆるナイロンが合成されます。界面で、次のような反応が進行したのです。
COCl−R1−COCl + NH2−R2−NH2 → COCl−R1−CONH−R2−NH2 +HCl
クロリド基、アミノ基ともに次々に、クロリド基はアミノ基とアミノ基はクロリド基と反応して最終的には
のような巨大分子(重合物、ナイロン)となります。 この場合、生成する塩酸(HCl)をアルカリで中和してやらないと反応は停止してしまいます。
このようにして、油滴をナイロン膜で被覆したマイクロカプセルを調製することができます。
これを濾過すれば、ナイロン膜で覆われた、油を芯物質とするマイクロカプセルが得られます。
―――――――――――――――
注1) ジクロリド化合物のジは2という意味で2個のクロリド基(−COCl )を持った化合物という意味です。これを、 COCl−R1−COCl と表示します。 R1はメチレン基での場合は、セバコイルクロリドです。
注2) ジアミン化合物のジは2という意味で2個のアミノ基(−NH2 )を持った化合物という意味です。これをNH2−R2−NH2 と表示します。R2はメチレン基での場合は、ヘキサメチレンジアミンです。
Q. マイクロカプセルの用途を教えてください。
A. マイクロカプセルの高い機能性からすれば、今後もどんどん用途が広がっていくと思われます。以下は製品(商品)化されたマイクロカプセルの例です。
|